事業承継は相続(事例①)
事業承継は相続と絡んでいます。
今回はその実例をお話していきます。
事業承継の前に、相続の一般論をお話します。
事業承継は相続と書かれた図のブルーのラインがかかっているとこをご覧下さい。
図をみると、あるご家族に、お父さんとお母さんがいました。
長男と長女と次男の3人兄弟姉妹です。
長男がお父さん・お母さんと同居をしています。
長男夫婦には子供が2人いますよ。
孫が2人いるわけですね。おじいちゃんおばあちゃんが同居している。
よくあるパターンですので、こういう家族を想定して下さい。
大体こういうケースでは長男の嫁が、お父さん・お母さんの面倒をみている場合が多いです。
特に高齢になってくると面倒をみるというパターンになるわけですね。
一番苦労するのは、「長男の嫁」ということが大体のパターンですね。
長女と次男は、お兄さん夫婦が両親の面倒をみてくれているので、安心して外で暮らしています。自分で家を買って暮らしているということですね。
長男はですね 基本的にお父さんの財産の土地に住んでいるわけですね。
両親がだんだんと高齢化してきます。
高齢化により、「バリアフリーの家にしたい」とかということもよくあります。
よくあるパターンは、長男が兄弟姉妹を呼んで話します。
「親父が弱ってきたので、ちょっとバリアフリーに家を建て替えないといけない。」
「俺が自分で住宅ローンを払って、この家に二世帯住宅を建てて、一緒に暮らしていこうと思うのだけどどうかね?」なんて相談をしたとします。
そしたら大体ですね、長女も次男も「いいんじゃない」って言います。
自分がお金払うわけじゃないですし、兄貴が払ってくれて建てるのだから文句はないわけです。
したがって、それでOKでそこへ家を立てました。
念願の二世帯住宅ができ、仲良く暮らしていきます。
ところがですね。年をとればお父さんが亡くなるわけです。
お父さん亡くなって、相続が発生するということになります。
お父さんの財産は土地建物が5000万円、預金は1000万円でした。
そこで相続が発生しました。
そうすると、お母さんも結構な歳になっています。
だいたい四十九日が終わりますと、「相続のことなのだけど・・・」というふうに兄貴が喋るようになるのです。
「考えたらこの土地は親父のものなのだけど、もう自分もここに家を建てちゃって、住宅ローンかかえて建てているし・・・」
「これからおふくろの面倒を見ていかなきゃいけないから、この土地は俺に相続させてほしい。」
「親父の残した預金が1000万円ある。でもおふくろにこれからのお金が何だかんだ言っても300万ぐらいかかると思う。」
「それなので残った700万を2人で分けて、350万ずつに分けてもらってね、相続を終わりにしたいのだけど、どうだろうか?」という話になりました。
親父さんの遺した財産は6000万円です。
法定相続分でいうとお母さんが3000万円。子供たちは1000万円ずつです。
法定相続分はこのようにようになります。
しかし、今回の場合は兄貴が5000万円分のものを持っている。
そうすると、他の兄弟が、「それで、いいよ」っていうと話は終わりです。円満相続発生。
円満相続で終われば言うこと無しですが、今頃は法定相続分はいくらなのか誰でも知ってるわけです。
そうすると、「ちょっと待ってよ!いくら何でも少なすぎない?」っていう話がでます。
この話が出た瞬間から、相続争い勃発っていうのが起こります。
そうすると、大体兄弟で争うと、段々と話がエスカレートして感情的になったりします。
昔のことまででてきます。
昔の事が出てきたら、いろいろ損するのは特に長男です。
相続で考えると、民法が昭和23年に均等相続に変わったわけです。
それまでは家督相続ですから、現在相続が発生する人たちってほとんど家督相続で育っている雰囲気があるわけです。
したがって、長男が跡取りということでいつも優遇されている生活をしているのです。
そんな不満を長女とか次男は子供の頃から必ず持っているものなのです。
したがって、昔のことまで掘り返して「兄貴はずるい」とか、「いつも得している」とかいう話になります。
これは非常に危ない話ですけど、本当にそのようなことばかり起きるわけです。
したがって、どうなるかというと、もう話し合いがつかないわけです。
兄弟姉妹で拉致があかないから、家庭裁判所に行きましょうっていうことになります。
家庭裁判所に行って決めてもらおうとなります。
調停してもらいましょうということになります。
そうすると、裁判官が決めるわけです。
調停ということになると、結果的にどうなるのか?
裁判所が決めるということは、基本は法定相続分というのを重視するわけです。
従って、この場合ならば、土地の共有ということが起きるわけです。
この5000万円の土地の何%が兄貴で、何%が次男で、何%が長女である。
共有の登記をして相続が終わるわけです。
ところが、このままでいくと長女・次男の2人は現実的に350万円しかもらってないわけです。
ということは、何が起きるかっていうと、共有物分割請求っていうのをこの2人が起こす。
そうすると、裁判所は何を言って審判するかというと、共有物の分割請求です。
これをされると、結果的にはどうなるかというと、競売なのです。
「土地を売ってお金にしてあげてください」っていうこと。これが裁判所の結論です。
裁判までして揉めた。そうすると二度と兄弟姉妹で会いたくないじゃないですか。
こういう争いになってしまうということになります。
ということで何をお伝えしてきたかというと、要はこれが一般の相続の最悪のパターンです。
事業承継でこれをどういうふうに教訓として見ていくかということは、次回からお話します。
社会保険労務士・行政書士・FP 大西英樹