事業承継は相続である_事例③
3番目の例です。これも面白い例です。
どういうことが起きたかというと、お父さんは3代目か4代目の社長でした。
先祖代々の社長をやっていました。
長男が後継者であり、そこの会社の専務でした。
長女と次男は、会社にはノータッチで外に出ていました。
長男は嫁さんをもらっていたのですが、子供がいませんでした。
こういう状態の図です。
お母さんは亡くなっていましたが、お父さんはいましたよ。
この状態で、お父さんが亡くなって相続が発生したらどうなるか?
法定相続分は長男・長女・次男の3分の1ずつすね。
ところがです、この会社はちょっとまずいことがありましたよ。
何がまずいかっていうとです。
F井総研の経営コンサルタントのアドバイスで、資産を全部会社のものにしていたのです。
昔はこういうことを指導する人がいっぱいいました。
社長の持っている土地とか、社宅や他の所有物を何もかも、ともかく資産を会社で持つことにして、会社の株価をどんどん上げていたのです。
それで会社の評価が良くなったっていうふうに思っていたわけですね。
従って、この会社はとっても株価が高かったのです。
法定相続分は3分の1ずつでした。
会社の株価が高いと事業承継や相続のとき困る。
そんなことは、この専務はよくわかっていて、そういうことが起きるだろうと想定してたのです。
したがって、かなりの金融資産を貯めていて、銀行からもお金を借りるようにしていました。
法定相続分の3分の1の分を払えるようにしていたのです。
ところが、長女も次男もそれを拒否したのです。
「株でよこせ!」って言ったのです。
なぜでしょうか?
ちょっと考えてみてください。
兄弟姉妹にとって先祖代々の会社です。
「お金にしてくれ」とは言ってないし、お金だったらお金はあるから、他の兄弟姉妹にお金を支払う用意はできていましたよ。
どういうことかっていうと、長男には子供がいないのです。
したがって、会社の株を長男が全部継いだ場合、長男が亡くなったときにどうなるのか?
財産の4分の3は嫁さまのほうへ行くわけです。
ということは、先祖代々の我が家の資産が、嫁さま側に行ってしまう。
このことが怖かったわけです。
これは、長男もある意味わからないではないわけです。
「なるほど、それもそうだね」ということになりました。
したがって、会社の株を3分の1ずつにしたっていうことになりました。
それで相続は円満に終わったのですが、ここで悲惨なことが起きるわけです。
経営を何もしていない長女と次男ですが、会社の経営に口出しするようになりました。
2人合わせると長男より大株主になります。
ということで、なんとなく意見が合わなくなって、最終的にはこの会社は潰れました。
こういう話です。
株で争いを起こすと非常に問題が起きるということの例を3つお話させていただきました。
だから、株っていうのは移転だけ考えていただけでは駄目だよっていうのはそういうことです。
事業承継は相続であるということがわかる例話でした。
社会保険労務士・行政書士・FP 大西英樹